本研究ではこれまでに室内実験用水路での短期間の急性毒性影響試験が可能となったEpeorus latifolium (エルモンヒラタカゲロウ)とBaetis thermicus(シロハラコカゲロウ)幼虫の個体群を用いて、餌条件下でのフェノブカルブの1〜16μgl^<-1>の濃度で連続暴露をおこなうことで、野外で検出される比較的低濃度の農薬の影響を個体群レベルでその幼虫の成長と羽化に対する影響を評価した。 本実験で用いた人工水路では、投与直後(O-h)は各濃度で74〜83%の高い回収率を示した。別時間後は初期濃度1、2μgl^<-1>の水路で残存率は52、例%と低下したが、4μgl^<-1>以上では70%前後と比較的高い残存率であった。邸時間後は、初期濃度1〜4μgl^<-1>の水路で残存率は低下したもののそれ以上の濃度では別時間後とほとんど変わらなかった。 流水性のカゲロウ類幼虫を実験水路に保持して、カーバメイト系殺虫剤、フェノブカルプの個体群レベルでの羽化に対する生態影響を調べた。羽化個体数は、エルモンヒラタカゲロウの対照区(0μgl^<-1>では、始めの30日で緩やかな増加を示し、60日目にはほぼすべての個体が羽化した。また、最終的な死亡率も3%程度であった。1、2μgl^<-1>の低濃度では、始めの20日目までは羽化数が増加するが、その後は羽化が抑制された。二方、シロハラコカゲロウは1〜4μgl^<-1>の濃度では、死亡率は最初の5日間で安定する傾向が見られた。また、羽化は、生存個体に関してはどの濃度でも継続的にみられ、エルモンヒラタカゲロウのような低濃度の羽化抑制はみられなかった。このように、フェノブカルブは、エルモンヒラタカゲロウ幼虫の羽化に際して、ごく低濃度(1、2μgl^<-1>)で内分泌攪乱化学物質として働いた可能性があると考えられた。
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