本研究はこれまでに室内実験用水路での短期間の急性毒性影響試験が可能となったEpeorus latifolium(エルモンヒラタカゲロウ)、Baetis thermicus(シロハラコカゲロウ)とHydropsyche orientalis(ウルマーシマトビゲラ)幼虫の個体群を用いて、餌条件下でのカバーメイト系殺虫剤、フェノブカルブの1〜16μg1^<-1>の濃度で連続暴露をおこなうことで、野外で検出される比較的低濃度の農薬の影響を個体群レベルでその幼虫の成長と羽化に対する影響を評価した。 カゲロウ類幼虫を実験用水路に保持して、フェノブカルブの個体群レベルでの成長と羽化に対する生態影響を調べた。羽化個体数は、エルモンヒラタカゲロウの対照区(0μg1^<-1>では、60日目にはすべての個体が羽化した。また、最終的な死亡率も3%程度であった。1、2μg1^<-1>の低濃度では、初めの20日目までは羽化数が増加するが、その後は羽化しなかった。一方、シロハラコカゲロウは1〜4μg1^<-1>の濃度では、羽化は生存個体に関してはどの濃度でも継続的にみられた。 次にウルマーシマトビゲラ幼虫を実験用水路に保持して、フェノブカルブの営巣行動、成長透過に対する生態影響を調べた。4μg1^<-1>以上の濃度では営巣しない個体が見られ16μg1^<-1>の濃度ではすべての個体が営巣しなかった。対照では、実験開始40日後から蛹化みられ、すべての個体が羽化するまでに80日間要した。1、2μg1^<-1>の濃度では、幼虫のまま死亡した個体もみられたが、4、8μg1^<-1>の濃度では蛹化できず幼虫のまま死亡した固体が全体の30〜50%を占めた。16μg1^<-1>の濃度ではすべての固体で実験開始2週間以内に死亡が確認された。
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