研究概要 |
本研究では、下水余剰汚泥の効果的な処理方法として現在広く普及している嫌気性消化法を厨芥等へも適用し、有機性廃棄物が有する潜在エネルギーを高速メタン発酵によりメタンガスとしてエネルギーを回収する技術を創成することを目的とする。古くから固形性有機物の嫌気性消化の試みはなされてきたが、実用化されるまでに至っていない。これは、固形性有機物に対して処理時間が長く、分解高率が低いなどの欠点が指摘されている。そこで本研究では、(1)高濃度微生物保持が可能な酸発酵リアクターの探索、(2)固形性廃棄物の高温自己消化による可溶化促進の評価、(3)分子生物学的手法による加水分解・酸生成・メタン生成微生物叢の動態解析などを明らかにすることにある。 嫌気性消化微生物叢動態の分子生物学的手法よる解析から,中温微生物叢に比較して高温の消化微生物群の多様性は低く、分解速度が大きい反面、基質組成・負荷変動に対する安定性が劣る事が想定された。16SrRNAを標的とした蛍光標識モレキュラー・プローブのIn situ Hybridization(FISH)法は嫌気性微生物に対しては有効的で、メタン生成菌の種レベル、属レベルでの菌叢分布の把握や定量ができ、リアクター内の微生物モニタリングに適用できることが分かった。また,メタン発酵に重要と考えられる数種類の新種細菌を単離・同定した。 固形性廃棄物の可溶化促進方法をいろいろ検討したが,これと言った有力な方法を見出すまでには至らなかった。このため,固形性廃棄物が微生物のリアクター内保持機能に阻害を及ぼし,高速処理が困難であった。可溶化促進技術が依然として課題として残った。 一方、回収する消化ガスを低コストの湿式脱硫装置でメタン純度を高め、ガス会社へ売却するなどの有効利用が可能であることを明らかにした。
|