本研究ではフジアザミ群落から木本群落へと遷移が進行する過程を詳細に調査・検討した。その結果をもとにフジアザミと木本植物であるミヤマハンノキの実生を移植することを試みた。種子の播種・苗の移植実験には、富士山の高山・亜高山帯に自生するフジアザミとミヤマハンノキを用いた。ミヤマハンノキは富士山の崩壊地に出現する植物で、窒素固定をおこなう植物であるため、窒素固定能力をガスクロマトグラフィーを用いて測定した。その結果、窒素固定能が高い植物であることが証明された。 両者を移植する実験により富士山の砂礫地の砂礫移動阻止に大きな役割を果たしていることが明らかになった。この結果の一部は日本生態学会誌(Japanese Journal of Ecology、49巻、1999)に報告された。 さらに富士山において人間の撹乱のないフジアザミ群落とミヤマハンノキ群落の調査を行い、群落の構造を明らかにし、保全に対する指針を作成した。また、ミヤマハンノキについては、富士山の亜高山帯において10ヶ所の実験的調査区を設置し、詳細な毎木調査をおこなった。同時に土壌環境の調査をおこない、雪崩に対する抵抗性について検討をおこなった。
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