フジアザミは日本列島中部に分布する植物である。中部地方においても、特に富士山の南東部に集中的に分布している。富士山の宝永山は1707年に噴火し、南東面の御殿場方向に広大な裸地を作った。この部分は現在でも広く裸地となっているが、部分的には多年生草本植物を中心とした植生が回復している。近年そのような場所に多大な人為的な撹乱が生じ、裸地が広がりつつある。一度裸地化した部分はその回復に多くの時間を必要とする。ここでは、富士山に自生するフジアザミを用いて、植生の保全と修復に関する基礎的な研究を行った。 その結果、ヒジアザミは植生を保全し修復するためには、極めて有用な植物であることが明らかとなった。特に、多量の発芽可能な種子を生産すること、種子の大きさにバリエーションがあること、苗が作りやすく移植が容易であること、などが実験的に証明された。種子のバリエーションでは1頭花に成熟する種子が小型のものから大型のものまで、約3倍の違いがあった。実験の結果、自然状態の土壌条件下で、各々(大型から小型種子)の役割が明らかとなった。 同時にミヤマハンノキの代表的な群落を調査し、その特性を明らかにした。その結果、フジアザミ群落で修復を行った後、ミヤマハンノキ群落に移行することが理想的であることがわかった。
|