研究概要 |
本研究では、(1)土壌中の芳香族化合物分解微生物群の活性プロファイルと菌数、(2)キノンプロファイルによる単一基質の分解菌の検出、(3)キノンプロファイルによる複数基質の分解菌の検出に関する研究を行った。 まず、芳香族化合物分解微生物群のプロファイルを検出する方法として、デヒドロゲナーゼ指示薬および脱塩素活性指示薬を用いた自作マイクロプレートを作製した。その結果、各種の芳香族化合物に対する土壌の分解ポテンシャルのプロファイルを得ることができた。堆厩肥を入れている土壌では、芳香族化合物の分解ポテンシャルがより多様であることが示された。一方、脱塩素活性を測定して、塩素化芳香族化合物の分解菌数プロファイルを調べたところ、堆厩肥の施用によって2,4-dichlorophenolは分解菌数が増えるが3-chlorophenolでは影響が無いという興味深い現象が見いだされた。 次に、全キノンの分析と同時に14C標識キノンを検出することによって、土壌中の全微生物群の構造と特定の基質を資化する微生物群の構造を同時に調べる方法の開発を行った。グルコースあるいはグリシンの様に土壌中に資化菌が多く存在すると思われる物質の場合、非常に高い再現性が得られ、単一基質を土壌に添加した場合の分解菌の検出法を確立することができた。しかし、芳香族化合物のモデルとしてフェノールと安息香酸を用いた実験では、土壌中の無機化率や全キノンプロファイルおよびキノンの14C標識率は、2連の間で一致しており再現性が得られているのに、^<14>C標識されるキノン種は、2連の間で大きくばらつく結果となった。そのばらつきの原因は、土壌の微視的性質のばらつきによるものか、分解菌数が少ないためなのか、現時点では不明である。しかし、無機化率とキノンの^<14>C標識率の結果から、同時にフェノールと安息香酸が存在した場合には、無機化率が単独の場合とは異なることが明らかにされた。複数の基質が存在する場合でも^<14>C標識キノンを検出することによって資化菌群を検出するという方法が利用可能であることが、明らかとなった
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