研究概要 |
現状のライフサイクルアセスメントでは,リサイクル工程や廃棄物の処理・処分段階での環境負荷が十分に定量化されていないことを踏まえ,廃棄・リサイクル工程での環境負荷を明らかにするために,特に生ごみ処理に注目し,その処理方法による温室効果ガス排出量を定量化して比較した。家庭から排出される生ごみの処理方式として,収集方式(混合収集/自家処理/分別収集),処理方式(直接埋立/焼却/無動力堆肥化/動力堆肥化/大規模堆肥化/メタン発酵),処理残渣の使途(埋立/焼却後埋立/農地-園芸利用)の異なる10種類のシナリオを想定した。エネルギー消費にともなう二酸化炭素の発生に加え,埋立地や農地におけるメタン・亜酸化窒素の排出および堆肥利用による合成肥料の代替効果も考慮した。温室効果ガスの排出については,いずれのシナリオにおいても,輸送プロセスでの排出は少なく,処理プロセス(焼却,堆肥化,焼却前の埋立,土中分解)からの排出が多かった。温室効果ガスの種類別に見ると,生ごみの分解によって生じる二酸化炭素およびメタンが大半を占め,エネルギー消費に由来する二酸化炭素の排出は少なかった。亜酸化窒素は,各シナリオにおける温室効果ガス総排出量の1割前後を占め,エネルギー由来二酸化炭素と比較してシナリオ間の差が小さかった。これらから,各シナリオにおける温室効果ガス排出量の多寡を決定する主な要因は,生ごみの分解によるメタン放出および処理過程でのエネルギー消費にあると評価された。シナリオ別に見ると,生ごみを分別してメタン発酵させた後,残渣を焼却するプロセスが76.3〜79.5kg-C/tonと最も温室効果ガス排出が少なく,生ごみ処理機を用いて分解処理するプロセスが227〜230kg-C/tonと最も排出が多かった。
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