研究概要 |
石油や有機塩素化合物により汚染された土壌,海域,地下水等のバイオレメディエーションを効率的に行うには,芳香族化合物分解菌群のモニタリングが重要となる。昨年度の研究で,様々な芳香族化合物の主要な中間代謝物であるカテコールの環開裂を担うカテコール1,2ジオキシゲナーゼ(C1,2O)及びカテコール2,3ジオキシゲナーゼ(C2,3O)をコードする遺伝子をPCRにより検出するための,遺伝子抽出法及びプライマーの設計を行った。この結果を受けて,本年度は分解遺伝子および分解遺伝子転写産物(mRNA)の定量法とその実用性について検討した。MPN-PCRにより多様な芳香族分解菌を感度良く定量するために,様々な反応条件でPCRを行ったところ,アニーリング温度を順次下げるStepDown-PCRにより多様な菌株のカテコール分解遺伝子が増幅され,20cell以上の菌数で検出が可能であった。さらに様々な水環境試料中に存在する分解菌の定量を試みたところ,環境試料に含まれる物質や細菌よる定量阻害はなく,環境試料中の分解菌定量法が確立された。続いて,RT-PCR法を適用することで,分解遺伝子の転写産物の定量に成功した。以上の結果を受けて,多様な微生物混合系である活性汚泥中に存在する芳香族化合物分解菌群のモニタリングを試み,分解菌群およびその代謝活性を検出・定量することに成功した。本研究成果から,バイオレメディエーションの対象環境中で,浄化微生物群とその活性を検出・定量する事が可能となったものと考えられる。
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