研究概要 |
本研究は二酸化炭素をはじめとする地球温暖化ガス排出抑制のための環境経済政策を評価するための数理モデルを開発し,その分析を試みることを目的としている.平成10年度〜12年度に実施してきた研究は次の通りである. ・平成10年度:地球環境問題を対象にして,物財の均衡を産業連関分析モデルとして開発した. ・平成11年度:地球温暖化防止京都議定書で決定された二酸化炭素排出総量の削減目標を,炭素税のみによって達成しようとした場合に,炭素税およびエネルギー税が物価と国際競争力に及ぼす影響を分析した. ・平成12年度:炭素税による税収を,排出権の購入や消費税に還元したときの効果を分析した.そこでは日米英独仏の先進5カ国の産業連関を考慮し,各国の利潤最大化行動を,国内取引と国際取引のもとでモデル化した. 平成13年度は,過去3年間の研究成果をふまえ,米国が京都議定書の批准に参加しない場合の影響を分析した.その結果,次の知見が得られた. 1)米国が参加しない場合,排出権取引価格が約1/7に低下する. 2)米国が参加しないことによるEU諸国と日本に対する経済的影響は少ない. 3)京都議定書で決定された二酸化炭素排出総量の削減目標を達成する上で,排出権取引に参加する政策がEU諸国と日本にとって効率的な政策である. 京都議定書の遵守にはコストがかかる.すなわち日本経済へのマイナスの影響とそれに伴う国際競争力の低下が懸念されているが,本研究の結果は,各国が同率の炭素税を導入し,排出権取引に参加する場合には,日本の国際競争力の低下にはつながらないことを明らかにした.
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