環境資源の持続的利用における市場システム、政府システム、コモンズ・システムという3つのシステムの比較研究を行い、それぞれの役割・機能と最適な組み合わせについて検討した。 日本の森林資源を対象とした研究では、産業としての林業に依拠した日本の森林管理組織は、私的所有であれ国有であれ、またコモンズであっても、持続的森林管理主体としては不十分であることが分かった。その結果、従来の木材生産という市場財の収穫のみを森林管理の目的とするのではなく、森林の公益的機能保持を目的とするために、木材市場の動向に左右されない森林の新しい価値付けを行っているボランティアの充実が必要であるという結論に達した。 次に、環境規制と経済主体の自発的な環境管理行動との関係について研究を行った。排出基準に基づく直接規制は、分権的に使用され一律でない排出基準が適用されるとき、静学的にも動学的にも効率的になる可能性を有しているが、こうした一律でない排出基準は、規制の公平性を損なう可能性が大きいという問題点もある。一方、市場的手法の1つである排出課徴金制度は静学的効率性を達成できるが、環境目標を達成するのは難しく、動学的効率性という点でも必ずしも優れているとは言えない。また、今日では、情報公開や環境会計の導入などによる企業行動への自主的・ボランティア的手段も用いられている。こうした手段は効率性という点で優れているといえる。 市場システム、政府システム、コモンズ・システムという3つのシステムのうち、効率性という点ではコモンズ・システムが優れているが、公平性は政府システムが優れている。このようにこれらのシステムは単独ではうまく機能しないため、3つを組み合わせた複合型規制が有効である。ただ、これらの中で、従来は政府システムの割合が大きかったので、今後は市場システムやコモンズ・システムの活用が重要となってくる。
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