7月から8月にかけて宮古島佐良浜に滞在し現地調査をおこなった。調査中には、漁師側の監視船が指定されたダイビングスポットで観光ダイバーを毎日監視するなど、対立にいたらないまでも緊張した関係が続いていた。 インタビューによる調査から、一年にいちど海の美しさを楽しむためにやってくる観光客と、海に接しながら日常生活を送っている潜水漁師では、珊瑚礁に対する認識におおきな違いがみとめられた。前者は、保護意識が高く珊瑚礁を貴重な場所として、いわばある種の聖地のように語ることが多かった。それに対し、後者は珊瑚礁の海を長年生活の場とし、生態に関する知識が高く、海を利用しながら人間と共存していくべきであると考えている。両者ともに環境保全にたいする意識は高く、むしろ自分たちこそが海を守っていると考えている。こうした観光ダイバーと潜水漁師の自己肯定的な意識が軋轢をより深いものにしている。 そもそもなぜ宮古群島では両者の関係が特に先鋭化してしまったのか、その原因を考えるために、伊良部島周辺の珊瑚礁の分布状況を航空写真および現地の踏査によって調べた。その結果、観光ダイビングのさかんな八重山群島にくらべ礁湖(イノウ)の面積が少なく、礁斜面で潜水する観光ダイバーたちとの十分な棲み分けが困難なためではないかという仮説をたてた。二年度の調査ではその仮説を検証し問題の生態学的な要因を明らかにする。
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