研究概要 |
1997年1月に日本海で座礁したロシアのタンカー「ナホトカ号」から流出した重油が漂着し日本海の海岸線を汚染した。筆者は4環以上の高分子量多環芳香族炭化水素(H-PAHs)による汚染のバイオレメディエーションを目的に研究を進め、ピレン資化性細菌Mycobacterium sp.H2-5株を用いて実験を行い、昨年報告したように漂着重油と市販C重油中のH-PAHsの微生物分解(30℃,20日間)を行い、それぞれの重油中のベンツ(a)アントラセン、ピレン、ベンゾ(a)ピレン、ベンゾ(ghi)ペリレンを、漂着重油ではそれぞれ、99%、92%、60%、33%、また市販C重油中では、それぞれ、92%、99%、60%、10%減少させことを示した。 今回はH2-5株をピレンを唯一の炭素源として含む培地で前培養し、集菌・洗浄後、重油を塗布したガラスビーズを入れたL字管に無機培地と共に加えて、30℃,45日間培養を行った。培養物をベンゼンで抽出した後、0.2μmのミリポアフィルターを通して除菌した。現在、本抽出物の変異原性試験(Salmonella typhimurium TA 100株によるAmesらの方法を改変したプレートインキュベーションョン法)を実施すべく準備を整えている。さらに、水溶性画分の変異原性も調べる予定である。今後は石油資化性菌との混合培養処理も検討する予定である。 なお、ピレンを基質とした分解生成物の解析も進めているが薄層クロマトグラフィーで分離したピレンの代謝酸化物と考えられる極性の高い2種の物質の部分精製を行い、フォトダイオードアレイを装備したHPLCの結果から、これらは逆相カラムで分離し、芳香環に由来するほぼ同じUV吸収曲線を与えることから、UV吸収に関与しない部分の構造が互いに異なる芳香族化合物であることがわかった。
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