ニホンカモシカの個体群動態に及ぼず食物条件の影響を解析するため、青森県下北半島の脇野沢村において下記の3項目の調査を実施した。 1) 識別個体の直接観察によりなわばり面積を明らかにした。なわばり面積は、成メスでは10.9±1.6ha(n=5)成オスでは19.2±9.8ha(n=3)であった。 2) 森林植生に対するカモシカの採食圧を明らかにするため、2×2mの相試験区と同面積の無相試験区(対照区)を5組設置した。試験区内に出現した低木類は15種573本であった。すべての低木にナンバーテープを付け、樹高、根本直径、冬芽数、枝先の食痕数を毎木調査した。今後、追跡調査を行い、相区と無相区の低木類の成長状況を比較していく予定である。 3) 食物条件及び採食効率を明らかにするため、雪上の足跡をたどり、単位移動距離当たりの食物供給量(低木類の根本断面積)と採食量(枝先の食痕数)を調査した。足跡10mを1単位(本)とし、40本の足跡について調査した結果、34種の低木類が出現し、そのうち28種が採食されていた。m^2当たりの低木類の本数、根本断面稙食痕数は、それぞれ4.1本、219.5mm^2、5.9個(いずれも平均値)であった。来年度以降の調査では、なわばりサイズや生息密度の異なる山形県朝日山地や長野県上高地で同様の調査を行い、今年度の結果と比較検討する予定である。
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