研究概要 |
青森県下北半島脇野沢村の研究フィールドにおける過去24年間のなわばり個体の動向をとりまとめた.成獣のうち,非なわばり個体は2%にすぎず,雌雄ともにほとんどの成獣がなわばりを保持していた.成獣の平均なわばり保持期間は,メスで11.7年,オスで12.4年であり,性差はなかった.なわばりサイズは,成メスで10.5±3.6ha,成オスで16.6±6.2haであった.成獣密度と,なわばりサイズ,なわばりの重複度合い,なわばりとしての非占有地率の3者との相関関係をそれぞれ検討したところ,成獣密度となわばりサイズの間でのみ有意な逆相関関係が認められた. これまでの研究代表者らによる研究では,植生・食物条件の変化に応じてカモシカの密度変化が生じたこと,およびなわばりサイズと食物供給量との間に逆相関関係が認められたことが明らかにされている.これらの結果と今回の結果を合わせで考察すると,カモシカでは食物量がなわばりサイズに影響を与えることによって成獣密度を規定していることが強く示唆された.
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