研究概要 |
1.フォトアフィニティラベルしたタンパクをマススペクトロメトリーにより構造解析する研究の一環として、MALDI-TOF/MS-PSD法によるオリゴ糖立体異性体の構造解析、MALDI-TOF/MS-ISD法の修飾ペプチドの構造解析への応用、無機固体マトリックスのMALDI-TOF/MS法への適用について検討した。その結果、MALDI-TOF/MS-PSD法によりオリゴ糖の異性体が区別できること、MALDI-TOF/MS-ISD法によりペプチドの修飾部位が容易に判別できること、無機固体マトリックスを用いれば従来困難とされていた低分子量物質でもMALDI-TOF/MS測定が可能であることなどを見出した。 2.フォトアフィニティラベルによるウミホタルルシフェラーゼ活性部位を決定する研究の一貫として、まず光反応性基であるトリフルオロジアジリン基ならびにアジド基を有する2種の光反応性セレンテラジンアナログの合成を試み、それらの効率合成に成功した。ついで合成した2種のアナログの化学・生物発光挙動を精査した結果、いずれも生物発光活性のあることを見出した。さらに合成アナログの光反応性を検討したところ、いずれもタンパク質修飾に必須の活性種であるカルベンならびにニトレンがそれぞれ効率よく生成することを確認した。 3.ウミボタルから電気刺激法でルシフェラーゼを放出させ、精製を行い、SDS-PAGEで68kDaのに単一バンドを有するウミボタルルシフェラーゼを得た。詳細な分子量を求めるため、MALDI-TOF/MSを用いて分子量測定を行ったところ,62kDa程度のタンパク質であることが判明した.一方,PNGaseF消化を行った後のSDS-PAGEによる分子量測定で,約2^〜3kDaのバンドシフトが見られたことから,ルシフェラーゼはN結合型糖鎖を有していると考えられる.現在この糖鎖構造を含めルシフェラーゼの構造確認を急いでいる. 4.今後の展望 光反応性ウミホタルルシフェリンの化学合成の目処がついたので、今後はそれらの合成を進め、実際にウミホタルルシフェラーゼのフォトアフィニティラベルを行い、マススペクトロメトリーにより発光活性中心の構造解析を進めていく予定である。
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