研究概要 |
カルコン合成酵素(CHS)は脂肪酸合成酵素や他のポリケタイド合成酵素とは遺伝子の相同性がなく、違う蛋白から進化して結果的に同じ反応をする様になった「収斂進化」(convergentevolution)の一つの例と見なされ、蛋白レベルでの反応機構を脂肪酸生合成酵素やポリケタイド合成酵素とは同列に論じられず、多くの研究者の興味を引いている。CHSはすべての植物に存在しているので、さらに多くの植物からCHSがクローニングされれば遺伝的な系統樹を造ることも可能であり、植物進化の指標の一つになり得る。CHSを取り上げている最大の理由はその分子量が43KDであり、脂肪酸合成酵素を含めたポリケタイド合成酵素が150から300KDという中で飛び抜けて分子量が小さい。 1. 大量の酵素を得るための大腸菌での発現系を確立し,X線結晶解析による三次元構造の解析を苛意中であるが,未だに結晶化には成功していない. 2. カルコン合成酵素(CHS)と類似性があるスチルベン合成酵素(STS)との間には交差反応性があり,両者の酵素の反応物の解析を進めた結果,CHSはかなりの量の環を巻かない副生成物を作る事がありからになっている.脂肪酸合成酵素や他のポリケタイド合成酵素との比較から,反応に重要と思われるアミノ酸配列を推定し,点突然変異の結果いくつかのアミノ酸の重要性を明らかにする事が出来た. 3. 植物で最も原始的な維管束植物であるマツバランはフェニルピロン誘導体を生合成する能力をもっている.現在まで4種のCHS類似のクローンを得ているが,その発現に際して大腸菌シャペロンの発現プラスミドを利用し,可溶性蛋白を得た.その結果4つのクローンはCHS,STS2種,環をまかないCTASであることを確認した.
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