申請者は、ホスト植物にムラサキを用い、酵母の一次代謝系遺伝子coq2を導入して、新規な天然生理活性物質を創出するためのメタボリック・エンジニアリングの技術的基盤を確立することを目的としている。 本年度は、まず酵母のゲノム遺伝子からユビキノン合成に関るprenyltransferase(PT)をコードする遺伝子COq2の全鎖長を含むDNA配列を、fidelityの高いPfuを用いて増幅し、これを鋳型として、細胞内での発現部位を念頭に置いた、発現コンストラクトののエンジニアリングを行った。すなわち、本酵素が本来の機能を発揮するのはミトコンドリアにおいてであるが、この酵素の働きで生産される物質はユビキノンであり、一次代謝産物に属する。一方、ムラサキの二次代謝においては、本酵素の2種の基質PHBとprenyldiphosphateは可溶画分に十分量存在し、小胞体(ER)膜上でさらなる代謝を受け、最終産物シコニンに変換されている。そこで細胞内において効率の良い二次代謝工学を達成するためには、PTをER膜上に局在させる必要がある。そこで基本であるミトコンドリアへのターゲティング・シグナルを持つcoq2-fullをはじめ、このシグナルを除いてcytosolicな画分に発現させるΔcoq2、リーダー・ペプチドをER targeting signalに置換し、さらにC-末端にER retention signalを付加してER膜上に発現させるようデザインにしたcoq2-erの3種のコンストラクトを作成することとした。 植物における外来遺伝子発現ベクターは、セレクションマーカーとしてhpt遺伝子を有し、プロモータには植物の多くの組織で高い活性を有するEl2-35Sを、ターミネータにはTocsを用いることとした。
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