研究課題/領域番号 |
10680567
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小林 資正 大阪大学, 薬学研究科, 教授 (40116033)
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研究分担者 |
青木 俊二 大阪大学, 薬学研究科, 助手 (60252699)
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キーワード | がん多剤耐性克服物質 / araguspongine / agosterol A / P-glycoprotein / MRP / Xestospongia属海綿 / Spongia属海綿 / 海洋生物 |
研究概要 |
P-glycoprotein発現ヒト咽頭上皮がん細胞(KB-C2株)およびMRP発現ヒト咽頭上皮がん細胞(KB-CV60株)を用いたがん多剤耐性克服物質を探索するアッセイ法を構築し、海洋生物由来の天然物の中から耐性克服物質をスクリーニングした。その結果、沖縄産Xestospongia属海綿から単離構造決定した1-oxaquinolizidine構造を有する大環状二量体アルカロイドaraguspongine類に、P-glycoprotein発現多剤耐性がん細胞(KB-C2)に対する耐性克服作用が認められた。上記海綿の主成分であるaraguspongine Dについて作用を検討したところ、3μg/mlの濃度でKB-C2のコルヒチンに対する耐性を完全に克服することができ、10μg/mlの濃度でも全く細胞毒性を示さなかった。さらに、araguspongine Dの立体異性体であるaraguspongine Eおよびaraguspongine Bも3μg/mlの濃度でKB-C2のコルヒチンに対する耐性を完全に克服することができ、1-oxaquinolizidine環の9および9'位に水酸基を有するaraguspongine Cも同等の作用を示したが、2-oxoquinolizidine環を有する二量体アルカロイドpetrosinは他のaraguspongine類の1/2程度の活性しか示さなかった。さらに、araguspongine EをNaBH_3CN処理して合成したジオール型開環体やジメチル硫酸で処理して合成したN-メチル体には耐性克服作用は見られなかった。また、三重県英虞湾で採集したSpongia属海綿のアセトン抽出エキスに耐性克服活性が見られたことから、この抽出エキスを活性試験の結果を指標に分画精製して主活性成分としてagosterol Aと命名した新規ステロールを単離し、その全化学構造を決定した。Agosterol Aは、3、4、6位にアセトキシル基、11、22位に水酸基を有する高度に酸素化されたステロールで、3μg/mlの濃度でKB-C2のコルヒチンに対する耐性を完全に克服することができ、10μg/mlの濃度でも全く細胞毒性を示さなかった。さらに、MRPを過剰発現するKB-CV60株のビンクリスチンに対する耐性も1μg/mlの濃度で完全に克服することができた。
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