自己防御あるいは抗菌作用を有するペプチドが相次いで見い出され、将来性のある医薬品として、更にはそのリード化合物として注目を集めている。これらペプチドの多くが塩基性かつ両親媒性構造を有している。一方、我々は以前より、塩基性両親媒性ペプチドを多数設計・合成し、抗菌作用や人工脂質膜との作用を検討して親水性・疎水性バランスや疎水性モーメントの活性に与える影響等を追求していた。本研究では塩基性あるいは疎水性アミノ酸を系統的に変化させ、より詳細な情報を得ること及び膜貫通ペプチドのモデル化の検討の2つを目的としているが、本年度は前者について一応の成果を得た。即ち、基準モデルペプチドAc-(Leu-Ala-Arg-Leu)_3-NHCH_3中のAlaの1〜3残基をGlyまたはValで置換したアナローグ(計6種)およびArgの1〜3残基をGlnで置換したアナログ(計3種)の諸性質を比較した。Valを2個導入すると酸性リン脂質ベクシル存在中若干のαヘリシティを示すが、中性リン脂質ベクシル存在下、水中ではβ構造となる。3個置換するといずれの場合もβ構造となる。Pro置換体はαヘリックス様構造を取ることから(以前の結果)、本実験の条件では、通常の結果と異なりValの方がProよりも強いヘリックス破壊能を示すことを見出した。中性・酸性リン脂質ベクシルに対する作用(膜破壊能)は高いヘリシティーと疎水性を有するペプチドが強力だった。Val及びGlnを3個置換したアナログ以外は、グラム陽性菌に対してほぼ同程度の抗菌活性を示した。この結果は抗菌活性には両親媒性構造と塩基性アミノ酸残基の存在が不可欠であることを意味する。国内・外の学会で報告するとともに、論文に投稿中(in press)である。
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