蛋白質の構造-機能相関研究のリード化合物、あるいは新規機能物質の開発素材としてペプチドが注目されている。我々は、これまで多数の塩基性両親媒性ペプチドを設計し、その構造、機能及び生物活性を調べてきた。主なものは抗菌・溶血作用ペプチド、レクチンの化学修飾並びに核酸キャリアーとしてのペプチドの利用である。(1)溶血作用が少なく強い抗菌活性を示すペプチドは医薬用の立場から望ましい。天然ペプチド、プリューロシジン及びバクテネシン5を選び、それらのアミノ酸置換アナログやフラグメントを合成し構造と活性相関を検討した。プリューロシジンについては、疎水性と電荷のバランスが活性に大きく影響することが明らかとなった。抗菌活性が残存し溶血活性が抑えられる条件を見出した。バクテネシンについては、中央部の繰返し配列部分のある程度の鎖長が活性発現に必須であり、N末端部の塩基性クラスターが活性増強に関与することを示した。(2)溶血性レクチンCEL-IIIのGlu、Asp残基の側鎖をGly-OMeで修飾すると、溶血活性のみならず糖結合活性、赤血球凝集活性が著しく低下した。糖結合部位あるいはその近辺のカルボキシル基が修飾を受け、糖(鎖)との結合が阻害されたものと考えられる。(3)塩基性αヘリックスペプチドを数個のガラクトースで修飾し、ヒト肝がん由来培養細胞への遺伝子導入能を解析した結果、修飾するガラクトースの多い程高い導入能を示した。また導入は細胞表面のアシアログリコプロテイン受容体を介して取込まれること、エンドサイトーシス経路で取込まれ、この経路の初期段階で細胞質に移行することも明らかとなった。これらの結果は国内・外の学会で報告すると共に、すべて英文論文で発表した。
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