生体膜類似の二分子膜特性を非水溶媒中で再現し、二分子膜の機能を拡張することを目的として下記のような検討を行った。 i) 光学活性を有し、かつ水素結合によって分子集合安定化が得られうる人工脂質として、L-グルタミン酸を基本骨格とするトリアミド型両親媒性化合物を分子設計ならびに合成を行った。 ii) 上記脂質の分散挙動をメタノール、エタノール、クロロホルム、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、シクロヘキサン中で調査し、ほとんどの溶媒でゲル化が起こることが確認された。 iii) ゲル化のメカニズムを調査するため、下記のような分析を行った。 走査電子顕微境観察:1〜10mMのベンゼンゲルを凍結乾燥したものについて調査すると、繊維状の会合体が絡み合ってネットワークが形成されていることが判明した。 透過型電子顕微鏡観察:0.01〜0.1mMのような希薄溶液ではゲル化は観察されないが、そのキャスト膜について観察すると、やはり繊維状の会合体が多数生成していることが確認された。 吸収スペクトル:指示薬としてシアニン系色素を混合し、その可視スペクトルを調査したところ、溶媒の種類によって異るが、ある濃度以上の脂質濃度で吸光係数が著しく減少することが認められた。透過型電子顕微鏡硯察により、ゲル化はしないが、脂質の会合が認められる濃度領域が存在することを確認した。すなわち、濃度の増加によりまず脂質の会合が始まり、続いて会合体の成長、会合体数の増加を経て、ゲルを形成するような会合体ネットワークを形成するものと結論した。
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