研究概要 |
放線菌から生産される坑寄生虫・坑昆虫活性を有するポリケチド化合物エバーメクチンのアグリコン部分の生成はポリケチド合成酵素によって行われる。同生合成遺伝子群の解析の結果、エバーメクチン-ポリケチド合成酵素は互いに向き合ったaveA1-2とaveA3-4の2ヶ所にコードされ、さらにそれはI型ポリケチド合成酵素であることが推察された。I型ポリケチド合成酵素はポリペプチド上に数種の機能ドメインが存在する多機能ポリペプチドであり、炭素鎖延長反応の必要回数分の縮合、およびそれに引きつづくβ位炭素鎖装飾の機能ドメイン構造を有するため、極めて巨大なポリペプチドである。今までにaveA1-2のオペロンの配列の決定を完了しており、エバーメクチンアグリコン生成のための12回の縮合のうち、6回の縮合に関与する2つのポリケチド合成酵素AVES1およびAVES2がこの領域にコードされていることを明らかにした。本研究ではもう一方のaveA3-4領域の全塩基配列を決定し、その配列から得ている情報をもとに残りの6回の縮合に関与するポリケチド合成酵素の構造、並びにポリケチド合成の各酵素反応の機構を明らかにし、AVMアグリコンの生成反応の詳細を明らかにした。すなわち、aveA3-4領域には2つのORF、4,881アミノ酸残基から成るAVES3及び5,532アミノ酸残基からなるAVES4がコードされていることが明らかとなった。また、2つのORFの間にはプロモーターあるいはターミネーター特有の配列が存在しないため、これら2つのORFはオペロンを形成しているものと推定された。塩基配列から推定されたAVES3及びAVES4の機能ドメインを検索した結果、それぞれ3回ずつの縮合反応ドメインを有することが推察された。また、AVES4のC末端側には伸張反応が終了したポリケチド鎖をポリケチド合成酵素から切り放すthioesteraseドメインの存在が認められた。我々が今までに解析したaveA1-2領域にコードされているポリケチド合成酵素の結果を総合すると、エバーメクチンアグリコンの生成は4種のポリケチド合成酵素によって12サイクル、53段階の反応によって達成されることが明らかとなった。
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