筋小胞体Ca^<2+>-ATPaseのHis-5及びArg-198が触媒部位またはその近傍に位置する。本研究ではこれらのアミノ酸残基(周辺)の部位特異的変異による機能解析を行った。 1.N末端ドメインの機能解析:N末端ドメインのE2からA4までの間で削除をした変異体Δ2-3、Δ2-4のCOS-1細胞での発現はあまり抑制されなかった。他方、H5まで削除したΔ2-5の発現は強く抑制された。またΔ3-4、Δ4-5、Δ5-6、Δ6-7、Δ6-8や、A4K、A4Dでも発現は強く抑制された。これらの結果は、H5を含むN末端の数残基がCOS-1での発現に重要であることを示している。また、in vitro発現系を用いた実験により、Δ6-8の転写、翻訳、及び膜への挿入が障害されていないことが示された。以上の結果は、COS-1で発現が強く抑制された上記の変異体では、Ca^<2+>-ATPaseのnative conformationが安定化されず、その結果COS-1のproteaseによって分解されたことを示唆している。2.Arg-198の部位特異的変異:Rl98を親水性と正電荷を保つLysに置換してもATPase活性とリン酸化酵素(反応中間体)濃度から求めたturnover rateは変化しなかった。親水性を保つが電荷を持たないGlnに置換すると若干減少した。他方、負電荷を持つGluや、疎水性のAla、Ileに置換すると著明に減少した。次に、リン酸化酵素の加水分解速度を直接測定した。R198Kの分解速度はWTと同じであった。R198Qでは分解が遅くなり、R198のE、A、I置換体では分解が著明に遅くなった。以上の結果は、198番目のアミノ酸残基が親水性であり、かつ正電荷を持つことが、リン酸化酵素の速い加水分解に重要であることを示している。
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