タンパク質の代謝回転速度ないしは寿命を決めている要素について、タンパク質分解酵素系の研究が行われているが、本研究では基質となるタンパク質側の被分解性を決めている要素について、翻訳後修飾を中心に検討することを目的とした。数倍の日内変動が知られているラット肝脂肪酸結合タンパクに、これまでの研究でシステイン残基の修飾、セリン残基のリン酸化、イソアスパラギン酸結合の生成などの修飾反応を見いだしているので、これらとタンパク質分解の関連を検討した。またタンパク質分解を調節するもう一つの因子である、プロテアーゼインヒビターとその阻害活性についても合わせて研究をおこなった。通常システイン残基はその高い反応性から酵素の触媒部位に細胞質タンパクには機能不明なシステイン残基をもつものが多い。ラット、両生類、硬骨魚類の肝臓およびラット上皮の脂肪酸結合タンパクにはチオール基が存在するが、一次構造上の位置が異なる。これらにジアミドを用いてグルタチオンを結合させ、タンパク質分解酵素にたいする感受性の増加を認めた。プロテインキナーゼAの触媒サブユニットによるセリン124のリン酸化とイソアスパラギン酸生成反応では十分量の修飾タンパクが得られずさらに条件の検討を行っている。プロテアーゼインヒビターでは担子菌類からセリン酵素の阻害タンパクを見いだし、プロ酵素との相同性を認めた。また活性型と不活性型の二つのコンフォメーションを取るという新しい調節機構を示唆する結果を得た。
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