研究概要 |
本研究は、我々が新たに発見した糖タンパク質に存在するオリゴシアル酸構造の普遍的存在と生物学的機能の解明を目的としており、以下のことが明らかになった。 1.多様なオリゴシアル酸構造に対する特異的なプロープの開発:8-O-硫酸化シアル酸をもつオリゴシアル酸を認識するモノクローナル抗体3G9、Neu5Acα2→8Neu5Acα2→6Glc構造を認識するモノクローナル抗体2A11、α2,8-結合Neu5Gcオリゴマーを認識するモノクローナル抗体AC-1を獲得した。ウニ精子表面に存在する2A11エピトープ構造が、受精時、卵と精子の接着を媒介することがFab断片を用いた受精阻害実験および免疫組織化学的解析によって明らかとなった。 2.オリゴシアル酸構造をもつ糖タンパク質の同定、構造および生合成過程の解明:血清糖タンパク質として、ウシ胎仔fetuinおよびα_2-macroglobulin、またウシ胎仔血清およびマウス生体血清中に脂肪細胞特異的タンパク質であるAdipoQが同定された。脂肪細胞の分化細胞系を用いて調べたところ、分化が進行するにつれてAdipoQの発現が増大し、それに伴ってオリゴシアル酸構造が増加することがわかった。 3.細胞分化とオリゴシアル酸構造の発現変化の有無の探索:ヒト前骨髄球性白血病細胞HL-60の顆粒球系細胞分化への誘導において、分化前後でオリゴシアル酸残基をもつ糖タンパク質の出現変化がみられた。また、脂肪細胞の分化細胞形を用いて、幾つかのα2→8シアル酸転移酵素の遺伝子発現を調べた結果、この変化に対応するような酵素は既知のシアル酸転移酵素中には見いだされず、脂肪細胞におけるオリゴシアル酸の発現には新しいシアル酸転移酵素の関与が示唆された。
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