研究概要 |
1: 本年度はゼノパスMAPキナーゼ(以後、MAPK)のactivation segmentに相当する26アミノ酸長の合成ペプチド(IDA;Inter-DFG-APEMAPKpeptideと命名)を用いて以下の2つの実験を行った。 (1)in vitro MAPK活性への影響の解析:IDAMAPKpeptideがMAPK及びMAPKキナーゼの活性をそれぞれ阻害定数82μM及び18μMで阻害することを見いだした。この阻害反応は活性化酵素を標的とし、可逆的かつ競合的なものであった。この阻害機構は、従来知られているMAPK活性調節機構に良く対応する。また、IDAMAPKpeptideはMAPKホモログp38キナーゼ等の他のキナーゼに対しては有意な阻害効果を持たないことから、MAPK/MAPKキナーゼ特異的阻害剤であることが示された。さらに、IDAMAPK領域の部分断片に相当する9アミノ酸ペブチドにMAPK阻害能がないことから、ペプチドはある程度以上の長さがなければ、MAPKと相互作用出来ないことが示された。(2)in vivo MAPK活性への影響の解析:IDAMAPKpeptideを微量注入したゼノパス卵母細胞において、プロゲステロンによるMAPKの活性化、卵成熟促進囚子MPFの活性化及び卵成熟が抑制されることを見いだした。IDAMAPKpeptideはMPFキナーゼ活性を直接阻害しないことから、プロゲステロン作用のシグナル伝達においてMAPK→MPF→卵成熟の経路の存在が示唆された(以上、BBRC,1998)。以上の結果を踏まえて、プロテインキナーゼの部分領域を構造・機能両面で代用するペプチドを用いる研究の今後の展望について総説を著した(Pharmacol.Therapeutics,1999)。 2: その他の関連研究成果として以下の2つが挙げられる。(1)ゼノパス卵の受精後数分以内に複数の卵タンパク質のチロシンリン酸化が起こるが、この反応を阻害すると受精依存性のMAPKチロシン脱リン酸化及び卵活性化が阻害されることを見いだした(FEBSLett.,1998,Dev.Biol.,1999)。(2)ゼノパス卵及びその抽出液を用いた実験から、MAPKが有糸細胞分裂に必須の役割を持つことを示唆する予備的な実験結果を得た。
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