本研究の目的は、MAPキナーゼ(MAPK)の活性制御領域/Inter-DFG-APE領域のアミノ酸配列に相当する合成ペプチド(IDA MAPKペプチド)の試験管内およびインビボでの機能を解析し、同時に細胞周期制御やシグナル伝達におけるMAPK経路の関与を明らかにすることである。 平成10年度は、リン酸化型および非リン酸化型のIDA MAPKペプチドの試験管内での機能を解析し、非リン酸化型ペプチドがMAPKおよびMAPKキナーゼに対する特異的阻害能を持つことを見いだした。また、同ペプチドはゼノパス卵母細胞のプロゲステロン依存性のMAPK活性化や卵成熟を阻害することから、インビボにおいても有効な阻害ペプチドであることが示された。 平成11年度は、非リン酸化状態のMAPK活性制御領域を認識する特異抗体を利用して、当該領域の構造と活性化状態の相関を解析した。その結果、低pHにおいてMAPKは、自己リン酸化活性の亢進と外来基質リン酸化能の低下を伴う活性制御領域の構造変化を起こすことが示された。 平成12年度は、細胞周期調節におけるMAPK経路の機能解析を行った。MAPK阻害ペプチドがゼノパス活性化卵の抽出液(サイクリングエキストラクト)を用いた実験系において、分裂期の短縮やスピンドルアセンブリチェックポイントの消失/減弱を起こすことを見いだした。またサイクリングエキストラクトの細胞周期進行と同調してCa^<2+>オシレーションが起こることや、細胞分裂周期が3段階(細胞核の形態やCdc2キナーゼ・MAPKの活性状態で区別される)でCa^<2+>依存性を持つことを見いだした。 その他の関連研究として、MAPKのチロシン脱リン酸化/不活性化を指標にしてゼノパス卵の受精シグナル伝達の解析を行い、チロシンキナーゼ〜ホスホリパーゼCγ経路が受精に伴うCa^<2+>誘導/卵活性化に必要であることを見いだした。
|