アフィニティー精製法を用いてカイコ体液中の真菌(Saccharomyces cervisiae)とグラム陽性菌(Micrococcus luteus)の認識、排除に関与するペブチドの探索を行った。 Saccharomyces cervisiaeには約42kDaのペプチドが結合した。本ペプチドのSaccharomyces cervisiae菌体への結合には2価の金属が必要で、菌体上の糖鎖が関与することが明らかになった。すなわち、既知の認識ペプチドから推し量る限りでは、本ペプチドはCタイプレクチンであると考えられた。また、このペプチドは血球で作られることが明らかになった。 一方、Micrococcus luteus菌体に対しても約42kDaのペプチドが結合した。本ペプチドのMicrococcus luteus菌体への結合には2価の金属が必要であり、菌体上の糖鎖が関与することが明らかになった。よって、既知の認識ペプチドから推し量る限りでは、本ペプチドはCタイプレクチンであると考えられた。また、関与する糖鎖としてはグルコース、マンノース、Nアセチルグルコサミンなど多種類が考えられた。 次に、精製したSaccharomyces cervisiae結合ペプチドとMicrococcus luteus結合ペプチドを元にそれぞれの抗血清を作製し、大腸菌に結合する43kDaのcタイプレクチンであるBmLBPを含めた3種の微生物結合ペプチドの異同について検討した。その結果、Saccharomyces cervisiae結合ペプチドとMicrococcus luteus結合ペプチドは同一かあるいは極めて構造的に共通性の高い関係にあることが明らかになった。また、BmLBPはこれら2種のペプチドとは異なるものであることが明らかになった。 以上のように、本実験の結果から昆虫体液中には性状の類似したCタイプレクチンが少なくとも2種類存在すると予想された。また、極めて少ない種類のCタイプレクチンで真菌、グラム陽性菌、グラム陰性菌の認識を可能にしていると言った、抗体による認識の場合とは全く異なる構図が予想された。
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