研究概要 |
本研究は、組換え体として大量発現した血小板由来増殖因子(PDGF)受容体細胞外ドメイン(αRD1-4およびβRD1-3)を用いて、リガンド-受容体複合体形成の分子的基盤についての知見を得ることを目的としている。昨年度はαRD1-4とPDGFとの複合体形成を検討し、D1〜D4のうちD2-3が直接リガンドと結合してリガンド:受容体=1:2の複合体を作ること、D4がこの複合体の安定化に重要であることを示した。本年度はこの知見を用いて、これらの可溶性受容体が効率的にアンタゴニストとして使用するための必要条件について検討した。 αRD1-4およびβRD1-3のC-末端側にグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)を融合したタンパク質αRD1-4GST、βRD1-3GSTを作成した。これらのタンパク質のPDGFアンタゴニスト活性を評価するために(1)PDGFの細胞表面受容体への結合実験(2)PDGF依存性の受容体チロシンリン酸化反応(3)細胞のPDGF依存性DNA合成に及ぼす影響を検討した。その結果、すべてのアッセイ系においてαRD1-4、βRD1-3ともにGST融合タンパク質型のほうが100倍から1,000倍強力な効果を示した。 この理由としてGST融合タンパク質がdimerとして存在している可能性が考えられた。そこで、各タンパク質を化学架橋剤で処理後、SDS-PAGEにより解析したところ、GST融合タンパク質においてのみdimerの存在が確認された。また、プロテアーゼ処理によりGST部分を除去し、αRD1-4部分のみからなるdimerを精製した。こうして作成したαRD1-4dimerはαRD1-4monomerよりもPDGFの細胞膜受容体結合活性阻害能が50倍以上高かった。したがって、可溶性受容体を前もってdimerにしておくことが強力なアンタゴニスト活性を示す上で重要であることが明らかになった。
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