研究概要 |
本研究は、組換え体として大量発現した血小板由来増殖因子(PDGF)受容体細胞外ドメイン(αRD1-4およびβRD1-3)を用いて、リガンド受容体複合体形成の分子的基盤について、知見を得ることを目的とした。 平成10年度はαRD1-4を各種プロテアーゼ限定分解により調整したフラグメントについて、PDGFとの複合体形成を検討した。αRD1-4とPDGF-BBを混合すると、2分子のαRD1-4と1分子のPDGF-BB(PDGF-B鎖のホモダイマー)とが安定な複合体を形成した。つぎに、αRD1-4からトロンビンあるいはリシルエンドペプチダーゼ処理により、PDGFα受容体細胞外ドメインのうちIg1からIg3までを含むαRD1-3、Ig1およびIg2のみを含むαRD1-2を大量調製した。これらのフラグメントを用いて、Ig4はPDGFと受容体の結合には直接関与しないが複合体の安定化に寄与すること、PDGF受容体の細胞外ドメインにおいてPDGF-AAとの結合には主にIg3が、PDGF-BBとの結合には主にIg1あるいはIg2が寄与していることを見い出した。 平成11年度は得られた知見をもとにして、強力なPDGFアンタゴニストのデザインを試みた。αRD1-4およびβRD1-3のC-末端側にグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)を融合したタンパク質を作成しあた。αRD1-4、βRD1-3ともにGST融合型タンパク質のほうが100倍から1,000倍強力なアンタゴニスト効果を示した。この理由としてGST融合タンパク質が二量体として存在している可能性が考えられる。そこでGST融合タンパク質を化学架橋剤で処理後、プロテアーゼ分解によりGST部分を除去し、αRD1-4部分のみからなる二量体を精製した。αRD1-4二量体は単量体よりもアンタゴニスト活性が50倍以上高かった。したがって、可溶性受容体を前もって二量体にしておくことが強力なアンタゴニスト活性を示す上で重要であることがわかった。
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