研究概要 |
2',5'-オリゴアデニル酸合成酵素(OAS)はインターフェロン誘導酵素の一つで、二本鎖RNAと複合体を形成して、ATPから2',5'-オリゴアデニル酸を合成する。われわれはニワトリOAS遺伝子が6個のエキソンと5個のイントロンからなり、2つの対立遺伝子(OAS*AとOAS*B)が存在することを明らかにした。第6エキソンはユビキチン様ドメインをコードしており、A酵素のこのドメインにある32アミノ酸がB酵素から欠失していた。第1から第5エキソンは酵素ドメインをコードしていた。White Leghorn のOAS遺伝子の多くはA/Aホモで、A/Bへテロはごくわずかしか存在しなかった。そこでまず、A/Bどうしのかけ合わせからA/AおよびB/Bホモを作出した。A/Aどうし、あるいはB/Bどうしのかけ合わせから生まれた卵の観察から、B/B卵の胚発生がA/A卵に比べ異常の生じやすいことが分かった。つぎに、A/AとB/Bヒナの赤血球あるいは胚繊維芽細胞を用いてA酵素およびB酵素の性状を解析した。その結果、B酵素はA酵素に比べて不安定で、細胞内プロテアーゼによって速やかに分解された。また、B酵素は容易に熱変性して二本鎖RNAへの結合能を失い、酵素活性を失った。このことは、ニワトリOASのC末端のユビキチン様ドメインが酵素ドメインのコンホメーションの安定化に寄与していることを示している。現在、ユビキチン様ドメインをもつタンパクがいろいろ知られるようになったが、本研究はこのドメインの機能を明らかにした最初の例となった。
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