研究概要 |
2',5'-オリゴアデニル酸合成酵素(OAS)はインターフェロン誘導酵素の一つで、二本鎖RNAと複合体を形成して、ATPから2',5'-オリゴアデニル酸(2-5A)を合成する。OASの活性部位モチーフとしてP-ループ、D-ボックス、KR-rich領域があるが、それぞれに変異を導入すると酵素活性が失われた。このうちD-ボックスはMg^<2+>結合部位であった。P-ループおよびKR-rich領域はATP結合部位であると推論された。一方、ニワトリのOAS遺伝子には6個のエキソンと5個のイントロンがあるが、第6エキソンはユビキチン様(UbL)ドメインを、第1から第5エキソンは触媒ドメインをそれぞれコードしていた。ニワトリOAS遺伝子には2つの対立遺伝子(OAS^*AとOAS^*B)の存在が認められているが、B酵素のUbLドメインからは32アミノ酸が欠失していた。A酵素およびB酵素の性状を解析したところ、B酵素はA酵素に比べて容易に熱変性して二本鎖RNAへの結合能を失い、2-5A合成活性を失った。また、B酵素はA酵素に比べて不安定で、細胞内プロテアーゼによって速やかに分解された。このことは、C末端にあるUbLドメインが触媒ドメインのコンホメーションを安定化していることを示している。さらに、B酵素をトリプシン処理すると触媒ドメインが出現するが、そのものは2-5A合成活性を有していた。これらの結果はUbLドメインが分子内シャペロンとして機能していることを示している。現在、UbLドメインをもつタンパクがいろいろ知られるようになったが、本研究はこのドメインの機能を明らかにした最初の例となった。
|