申請者らは、ラット肝臓細胞質画分から蛋白質合成阻害活性を有する新規な蛋白質を発見した。分子量14000の本蛋白質は、組織特異的に発現しており、肝臓の結合織と腎臓の近位尿細管において特異的に発現している。ラットPSPが報告された後、ヒトや他の生物種においてPSP様蛋白質が存在することが相次いで報告された。またホモロジー検索からPSP遺伝子は大腸菌からヒトに至る広範囲の生物種において高度に保存されており、PSPの細胞内における生理学的重要性が指摘されている。本研究では、PSPによる蛋白質合成阻害の分子機構ならびに生理的意義を明らかにすることを目的とする。本年度は、特にPSPの大腸菌における発現系の開発について検討した。クローニングによって得られたPSP cDNAからPCRによってopen reading frameを含む領域を増幅させた。増幅させた断片をpGEX4T-1ベクターに挿入し、PSPをグルタチオントランスフェラーゼ融合蛋白質として発現させる系を開発した。組換え大腸菌を培養した後、遺伝子組換えPSPをグルタチオンのアフィニテイーカラムによって精製した。精製組換えPSPの蛋白質合成阻害活性を、ウサギ網状赤血球の無細胞蛋白質合成系を用いて検討した結果、authentic PSPの蛋白金合成阻害活性より低いが、0.1μMのIC_<50>を示した。
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