研究概要 |
ラット肝臓過塩素酸可溶性蛋白質(L-PSP)は無細胞蛋白質合成系において蛋白質合成を阻害する蛋白質であるが、その作用機序は明らかでない。本研究は、PSPがユニークなリボヌクレアーゼであること、またリボヌクレアーゼ活性が翻訳阻害に関与している可能性を示したものである。ウサギ網状赤血球へ6.2μ MのPSPを加えると殆ど完全に蛋白質合成が抑制された。蛋白質合成阻害のキネッテイックスは、翻訳開始反応を阻害するヘミンコントロールド阻害因子とは異なっていた。L-PSPはmRNAの鋳型活性に直接影響を及ぼすことから、L-PSPの蛋白質合成阻害活性はPSPが持つリボヌクレアーゼ活性に依存すると思われた。またPSPはチクロヘキシミド存在下でポリゾーム破壊を誘導した。これらの効果は、遺伝子組換えPSPを用いても観察された。[α-^<32>P]UTPで標識したmRNAをPSPとインキュベート後薄層クロマトグラフィーで展開した結果、Ap,Gp,UpならびにGpが観察されPSPがリボヌクレアーゼであることが直接証明された。放射標識された5S rRNAを基質としてRNA分解の特異性を検討した結果、1本鎖のRNA鎖を特異的に分解することが明らかにされた。PSPのアミノ酸配列にはヒスチジン残基が観察されないことからPSPはユニークなリボヌクレアーゼであると思われる。
|