研究概要 |
本年度は,1.SPC4(PACE4)の酵素学的性質の解明,2.接着因子L1のプロセシングとSPC4の関与,3.HepG2培養細胞におけるアンチセンスRNAによるSPC4発現の抑制と分泌タンパクプロセシングに及ぼす影響の3点につき焦点をしぼり,その解析を行った.1の研究では,SPC4を過剰発現するCos細胞の培養液から,分泌された活性型SPC4をSPC4のC末端領域に対するモノクローナル抗体を用いて免疫学的に分離,精製し,特異的にSPC-4活性を合成基質を用いて測定する系を確立した.この方法を用いて基質特異性,阻害剤の効果について明らかにし,第71回日本生化学会大会,ゴードンカンファレンス(Hormonal and Neural Peptide Biosynthesis)で発表した.2の研究は,神経細胞の増殖,分化に重要な役割を有する細胞接着因子L1のSPC4によるプロセシングについて研究したもので,L1はモノマーとして合成された後,塩基性アミノ酸対でSPC4によりプロセスされ二量体になることを明らかにし,国際神経化学会にて発表した.3は,特に血清タンパクの生合成と分泌過程におけるプロセシングへのSPC4の関与を,アンチセンスRNAを用いた実験によって解析したものである.SPC4のアンチセンスRNAを安定発現するHepG2培養細胞の分泌タンパクを放射能で標識後,二次元電気泳動で解析すると,プロアルブミンの増加が認められた.プロアルブミンは分泌過程でN末のへキサペプチドが除去され,アルブミンに変換後,血中に分泌されるが,今回の結果は,初めて肝臓のSPC4が血清タンパクのプロセシングに関与することを証明した.同じファミリーに属するFurin,PC8についても同様な実験を行い,それぞれアルブミンのプロセシングに関与していることを明らかにし,アルブミンは少なくともSPC4,Furin,PC8によって分担してプロセスされることを示した.この結果も第71回日本生化学会大会にて発表した.また,SPC4の生合成過程の活性化機構についても研究を進めた.
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