研究概要 |
SPC4(PACE4以後この名称を使用)は、サチライシン様触媒ドメインを有するCa依存性セリンプロテアーゼ(SPC)である。SPCファミリーは現在7種類がほ乳類で同定され、ペプチドホルモンや分化因子が活性化される際のプロセッシングサイトに見られるRXRR,RXXR,RR,KR等の配列(塩基性アミノ酸対)のC末側を加水分解することから、これらの活性化に関与していると考えられている。分化因子等細胞間シグナリング分子の活性化機構とその調節を解明するためには、各SPCの機能分担、生理学的基質等を明らかにする必要があるが、特にPACE4はその中で最も研究が遅れ、不明な点が多かった。辻らは今までPACE4の組織分布、アイソフォームの生成機構、遺伝子構造について研究を行ってきた。本研究では、PACE4の生理機能を明らかにすることを最終目標として、1:PACE4活性化機構、2:AntisenseRNAによるPACE4の阻害と血清蛋白プロセシングに及ぼす影響、3:PACE4の酵素学的性質と特異阻害剤の開発、4:転写調節、につき研究を進めた。1では、分子内自己活性化によるPACE4活性化機構(業績1)、2では肝臓のPACE4はアルブミン、C4等の前駆体の塩基性アミノ酸対のプロセシングに関与していることを明らかにした(業績2)。3の研究ではCos細胞に遇剰発現したPACE4を免疫的手法により精製し、その酵素学的性質を明らかにした。またPACE4を阻害するα1-antitrypsin変異体の作製を行い、発生過程におけるPACE4の役割の一つはBMP4の活性化であることが判明した。4では、PACE4遺伝子5^`-上流域に存在する複数のE-box配列が正、負のエンハンサーとして機能していることが判明した。E-box配列は、発生過程で細胞分化に重要なbHLH型転写因子が結合する配列であり、本酵素の生理機能を知る上で極めて有用な手がかりが得られた。
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