1)Vibrio fischeriにおけるP-フラビン(PF)結合タンパク(PFBP)の発見と本タンパクの性質-筆者は発光細菌におけるルシフェラーゼの機能はPFの合成であり、luxオペロンの機能はPhotobacterium属においてはPFを補欠分子族とするFP_<390>の生合成であると提唱している。一方、Vibrio属発光細菌においてはluxオペロン中にFP_<390>をコードするluxF遺伝子が存在しないので生成したPFがいかなるタンパクに結合するかはわかっていなかった。そこでV.fischeri菌体抽出物中にPFを結合するタンパクを探索してPFBPを発見した。PFBPはα鎖のC末約25アミノ酸残基が削除されたルシフェラーゼに還元型PFが結合したタンパクであった。本結果はPFBPがフラボドキシン(FD)機能を持つという筆者の予測を強く支持するものである。 2)PFBPの3D構造解析-フラビンは単独では勿論のこと、タンパクに結合した状態においても好気的条件下ではすみやかに酸化されるのが一般的である。PFBPに結合している還元型PFが好気的条件下でなぜ長期間酸化されないのかは非常に興味があるので本タンパクの3D構造を解析するためにV.fischeriを大量培養し、PFBPを調製して現在結晶を作成中である。 3)V.fischeriにおけるFD遺伝子(fldAおよびfldB)および鉄取り込み制御遺伝子(fur)の同定-筆者のluxオペロンの機能に関する仮説は発光細菌におけるFDの存在を前提としている。そこでPCRを用いてV.fischeriにおけるfldAおよびfldBの存在を確認した。Proteobacteria γ-subclassに分類される通性嫌気性菌では酸化ストレス対策としてfldAの下流に隣り合ってfur遺伝子が存在すると予測されたのでfldA下流約1.5kbpの塩基配列を決定してfurの存在を確認した。配列決定にあたってはゲノムDNAを直接読み取るという方法(SUGDAT(Sequencing Using Genomic DNA As a Template)と命名)を開発し、格段に短時間で配列が決定できた。 4)V.fischeriにおけるコバラミン依存性メチオニン合成酵素(CDMS)遺伝子(metH)の同定-上記仮説は一方、CDMSの存在をも前提としている。metHは全長約3.7kbpといったかなり長い遺伝子であるが、SUGDATにより短時間で全長の塩基配列が決定でき、その結果本遺伝子のV.fischeriにおける存在が確認できた。 今回、科学研究費を得て筆者の長年にわたる発光細菌におけるluxオペロンの機能に関する研究が大きく進展し、ほぼ目的地点近くまで到達することが出来た。
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