研究概要 |
プリン分解の最終産物は動物種により異なり、ヒト上科、新世界のサルでは尿酸、その他の霊長類や哺乳類ではアラントイン、魚類、両生類では尿素、さらに下等になるとアンモニアである。 このように動物のプリン分解は高等なほど不完全であり、進化の過程で尿酸以降の分解酵素群が脱落している。Allantoinase(ALN)とAllantoicase(ALC)は魚類では別個の酵素であるが、両生類になると両酵素は複合体を形成する様になり、さらに進化すると脱落する事を報告した。ALN-ALC複合体(ALNC)形成と脱落の機構を明らかにするための研究を行い、以下の実績を得た。 1. 両生類ALNC複合体の内、ALNサブユニットの遺伝子解析を行った。抗カエルALN抗体を用いて、カエル肝臓gtllcDNAライブラリーをスクリーニングして単一クローンを得た。塩基配列を決定し、推定されるアミノ酸配列はカエル肝より精製したALNのアミノ酸配列と一致した。 2. ALN,ALCが異種蛋白として存在する魚類のALNは、生棲域によりその細胞内存在様式を異にしている。淡水魚類ではサイトゾールに存在するのに対し、海棲産では、ペルオキシソームにのみ存在している。最近我々は、魚類では、プリン分解の最終産物は尿素とグリオキシル酸であるが、このグリオキシル酸はプリン炭素の再利用の為にAlanine:glyoxylate transaminase(AGT)によってグリシンに変換されるが、この肝AGTがペルオキシソームとミトコンドリアの両オルガネラに局在していること、淡水産と海棲魚類の間では、酵素の細胞内局在性が生棲域によって異なることを明らかにした。 3. ラット肝に哺乳類には存在しないと思われていたUrcidoglycollatc lyascが存在すること、Kmの濃度を高める事によって,動物が高等なほど酵素活性を失っていく事を明らかにした。 4. 生息環境の異なる,イワシ(海棲),チィラピア(広塩域),フナ(淡水)の肝臓よりマグネットビーズ固定化cDNAライブラリーを構築した.イワシ肝臓より精製したアラントイナーゼをSDS-PAGEを行ったのちPVDF膜に転写し,ABIのプロテインシーケンサーを用いてアミノ酸配列を決定した.その塩基配列のオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRをおこない500bpのフラグメントを得た.RACE法を用いてアラントイナーゼcDNAのfull-lengthを決定した.C末端の配列より移行シグナルが,哺乳動物の他の酵素のPTS 1と比較していかなるバリエーションを持っているのか,またアラントイナーゼの細胞内分布が生息域で異なることをそれらの移行シグナルと環境と,どのように関連ずけられるのかを検索した.
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