補乳動物の副腎皮質はそれぞれ鉱質コルチコイド、糖質コルチコイド、および副腎性アンドロゲンを分泌する球状層(zG)、束状層(zF)、網状層(zR)の三層からなる。我々は近年、これら3層に加えて、zGとzFの間に皮質の幹細胞を含むと思われる細胞層(以下、新細胞層)を新たに見い出した。最近、私たちは新細胞層の性質を持つ細胞株を樹立することに成功した。本年度は、これらの細胞株の性質をより詳細に解析するとともに、未分化な状態を保っている細胞株に特異的に発現している蛋白質のcDNA単離を試みた。 樹立した細胞株をもちいて、未分化な状態を保っている細胞株に発現し、分化した細胞では発現の低い蛋白質を同定するため、cDNA単離をdifferential screeningによりおこなった。現在までに、転写調節蛋白質、転写コファクター、細胞間マトリクス蛋白質と相同性のある未同定の蛋白質をコードする。DNAを単離した。これらは、遺伝子の発現調節、細胞間相互作用に関与することから、発生・分化に重要な役割を持ちうる分子であることが期待される。現在、組織内発現部位の同定および、機能解析を進めている。 これまでの研究を通じて、われわれが見いだした未分化で、増殖性に富む細胞層が、副腎皮質の幹細胞を含むことが、ほぼ確実なものとなった。今後、幹細胞の分化、増殖がどのような分子機構で制御されているかが、重要な課題として挙げられる。この分子機構の解明には、未分化細胞株に特異的に発現している分子の同定が重要な知見を与えると思われる。
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