平成10年度には、単一のミトコンドリアでは膜電位が生成・消失を繰り返していることを発見した。平成11年度には、この現象が生じるメカニズムについて検討した。 1)Permeability Transition Pore(PTP)が繰り返し開閉することによる膜電位の生成・消失が生じる。 蛋白質複合体からなるチャネル(PTP)が開くと、ミトコンドリア膜のイオンに対する透過性が一過的に上昇することが我々の研究以前に知られていた。この透過性の変化を抑える試薬として、Bongkrekic Acid、ADPがミあり、これらの試薬が我々の発見した膜電位の変動に影響を与えるか調べた。その結果、これらの試薬により膜電位の変動が抑制され、我々の発見した膜電位の変動がPTPの開閉によることが分かった。 2)PTPが開く頻度は、電子伝達系を電子が流れる速度に応じて決まる。 ミトコンドリアに添加するリンゴ酸濃度を増加すると、膜電位の生成・消失回数がそれに応じて増加した。同時に、ミトコンドリア内NADH量、ATP合成量も増加しており、これらとの関連を検討した。まず、ロテノンを添加しNADH生成を抑制せずに電子伝達を抑制した。この結果、振動回数は大きく抑えられ、PTPが開くのはNADHやリンゴ酸が直接影響を与えているのではなく、電子伝達系を電子が流れる速度に依存することが分かった。次に、ATP合成酵素を阻害してPTPの開閉を測定すると、ATP合成酵素の阻害の有無には関係なくPTPの開閉は生じていた。更に、電子伝達系によらず膜電位を形成させた場合もPTPの開閉は観察されなかった。
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