研究概要 |
大腸菌、バキュロウイルスなど従来の遺伝工学的手法を用いた発現系では機能を保ったまま得ることが困難な骨格筋のミオシン蛋白をGFP(Green Fluorescent Protein)とのキメラ蛋白として試験管内合成させ、1分子レベルで機能評価をおこなうということを目的とした蛋白の新しい機能評価系の開発をおこなっている。この系の特徴は1)短時間でDNAから直接蛋白の機能(酵素反応、運動様式、構造・化学状態)を1分子レベルで評価できること。2)蛍光ラベルの化学修飾による蛋白の変性、活性の低下もGFPとのキメラ蛋白として発現させることにより回避される。3)真核生物の由来の蛋白の修飾も期待される。などが考えられる。 現在までに発現されたニワトリ骨格筋ミオシンS1-GFPキメラ蛋白は坑GFP抗体を用いたイムノプロッティングにより約118kDaの蛋白として発現が確認された。さらに、また、全反射蛍光顕微鏡を用いてGFP1分子のイメージングをおこない、このキメラ蛋白1分子の同定に初めて成功し、また、S1-GFPキメラ蛋白の1分子ATPターンオーバーの観察に成功し、その結果は論文に発表した。また、次なる1分子レベルでの機能評価としてアクチンフィラメントとの相互作用をおこない、ATPが存在しない状態でミオシンS1と蛍光ラベルしたアクチンフィラメントとの間でのライゴール結合が確認され、現在、張力測定など研究が進められている。一方、現在研究中のモーター蛋白にとどまらず、G蛋白、遺伝子の調節蛋白などの制御蛋白の機能評価へと応用できうると考え、様々なグリーン発光蛋白変異体とras,rafといったシグナル伝達に関与する蛋白とのキメラ蛋白を作製中であり、また、グリーン発光蛋白変異体を用いて1分子エネルギー移動法へ応用するための系の立ち上げを試みている。
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