研究課題/領域番号 |
10680642
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
小園 晴生 東京理科大学, 生命科学研究所, 助教授 (80287482)
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研究分担者 |
中村 春木 生物分子工学研究所, 情報解析研究部門, 部門長
古川 功治 東京理科大学, 生命科学研究所, 助手 (00297631)
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キーワード | TCR / MHC / 酸性小胞 / 熱測定 / アゴニスト / アンタゴニスト / エントロピー / エンタルピー |
研究概要 |
TCRとそのリガンドの解析を行うに当たり、本年度はリガンドつまりMHC分子の物性の解析を行った。 MHC class II分子は専門的抗原提示細胞のみが持つ分子で、抗原ペプチドをヘルパーT細胞に提示する。抗原提示細胞は、細胞外に存在するタンパク質を取り込み、酸性小胞に於いて分解し、その分解断片をMHCII分子へ結合させる。MHCII分子は、生合成時、インバリアント鎖と結合しており、インバリアント鎖の一部(CLIP)はMHCII分子のペプチド収容溝に埋もれている。酸性小胞内の低いpHはこあCLIPと抗原ペプチドの交換に必須であると考えられている。本研究では、酸性pHがどの様な構造的要因でペプチド交換に必要なのか明らかにするために、ペプチド/MHCII複合体のpHに依存した安定性を熱力学的に解析した。 MHCII分子として、ヘモグロビンペプチド(64-76)とリンカーを介して共有結合したIE^Kを用い、測定機器として示差走査型熱量計を用いた。その結果、酸性pHではペプチドMHCHII複合体のTm値は中性よりも大きく、安定であることが分かった。その安定性は主にエンタルピーの寄与によるものであった。また抗原ペプチドのアミノ酸を1残基変えたアンタゴニストペプチドと安定性を比較したところアゴニストペプチド複合体のTm値の方が大きく、それはエントロピーの寄与によるという結果を得た。 以上のごとくこれまでの研究で、ペブチドMHCII複合体はペプチド交換をおこす酸性pHでより安定な構造をとり、またペプチド残基の変異は分子の柔軟性に影響を及ぼすことを示唆した。このような知見が、実験的に示されたことは初めてである。
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