研究課題/領域番号 |
10680642
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
生物物理学
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
小園 晴生 東京理科大学, 生命科学研究所, 助教授 (80287482)
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研究分担者 |
中村 春木 大阪大学, 蛋白質研究所, 教授 (80134485)
古川 功治 東京理科大学, 生命科学研究所, 助手 (00297631)
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研究期間 (年度) |
1998 – 1999
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キーワード | TCR / MHC / DSC / CD / ピプチド交換 / エンタルピー / エントロピー / フォールディング |
研究概要 |
抗原提示細胞は、細胞外に存在するタンパク質を取り込み、酸性小胞に於いて分解し、その分解断片をMHC class II (MHC II)へ結合させる。MHC IIは、生合成後、Ii鎖と結合し、Ii鎖の一部(CLIP)をペプチド収容溝に収納する。酸性小胞内の低いpHはこのCLIPと抗原ペプチドの交換に必須であると考えられている。 本研究では、酸性pHがどの様な熱力学的、構造的要因でペプチド交換に必要なのか明らかにするために、ペプチド/MHCII複合体のpHに依存した安定性を熱力学的に解析した。また、ペプチド自体の配列のペプチド/MHCII複合体の安定性への寄与について検討した。用いたタンパク質はMHC II I-E^k、MHC II I-A^b、及び、IgMである。これらのタンパク質の熱変性曲線を示唆走査型熱量測定計(DSC)、及び、円偏光二色性測定計(CD)を用いて測定した。DSC、CDともに、MHC IIにおいては、pH5の酸性環境下の方がpH7の中性環境下より安定であった。ところが、IgMは中性環境下においてより安定であった。予測は、MHCIIが酸性環境下で不安定であろうというものであった。ペプチド交換の起こるpHでは分子がより開いていると考えられたためである。またpHの低下による安定性の獲得はおもにエンタルピーが寄与することが判った。さらにペプチドの一残基置換が安定性に大きく影響を及ぼすことが判った。 これらの結果より、(1)酸性pHにおける安定化はMHC IIに特有の性質であることが示唆される。本来の働きは、ペプチド獲得後のT細胞への提示であり、それ以前の分解を防ぐためと考えられる。(2)酸性pHでエンタルピックに安定化するということは、ペプチド収容溝以外の部分が相互作用を増すことを示唆する。(3)ペプチドは MHC II を構成するタンパク質の一部としてフォールディングに寄与することが示唆される。
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