tmRNAはtRNAとしての機能とmRNAとしての機能を合わせ持つRNAで、2本のmRNAから1つのポリペプチドを作り出すという変則的な翻訳(トランストランスレーション)を行う。本研究はtmRNAの構造と機能を明らかにすることで、トランストランスレーションの機能の解明を目指すものである。 tmRNAはtRNAドメインの一端から派生する長いステムの先端部分が4つのシュードノット構造を含む大きなループを形成するという構造をとり、最初の二つのシュードノット構造に挟まれるように2個目のmRNAとして働く部分、すなわちタグペプチドをコードする領域が配置している。 昨年度は、mRNAドメインの直前に配置されている1つ目のシュードノット構造がトランストランスレーションにとって重要であることを示した。本年度は、NMRを用いてこのシュードノットの構造と機能の相関を明らかにした。現在、このシュードノットの全立体構造を明らかにすべくNMRによる解析を進めている。また、本年度は残る3つのシュードノット構造はトランストランスレーションにとって必要でないことも明らかにした。 また、mRNAとは遠く離れたtRNAドメインに一つの塩基置換を導入するだけで、トランストランスレーション活性だけを失わせるような変異体を得た。この変異はEF-Tuによる認識には影響を与えなかったが、リボソームへの結合には影響を与えた。一方、ダグペプチドのフレームをずらすようなmRNAドメイン上の一塩基置換も明らかにしている。いずれの変異もトランストランスレーションのメカニズム解明につながるものと考えて、解析を進めている。
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