tmRNAが終止コドンのないmRNA上で停止しているリボソームだけを選択的に認識し、翻訳再開の位置を決定しているメカニズムを明らかにするために、mRNAドメインを中心に数多くの変異を導入した。 翻訳再開の位置の12塩基上流に位置しているシュードノット(PK1)はトランストランスレーションの効率を大きく支配するものであったが、翻訳再開位置を決定するものではなかった。翻訳再開位置の決定には、PK1とタグペプチドをコードする領域に挟まれた部分の配列が大きな役割を果たしていることを明らかにした。この配列における変異のうちのいくつかのものはトランストランスレーション活性を大きく低下させ、またあるものはタグペプチドの翻訳のフレームを-1だけシフトさせた。なお、トランストランスレーション活性が最も大きく低下した86C変異体は、アミノアシル化活性もリボソームへの結合能力も失っていなかった。 また、mRNAとは遠く離れたtRNAドメインに一つの塩基置換を導入するだけで、トランストランスレーション活性だけを失わせるような変異体を得た。この変異はEF-Tuによる認識には影響を与えなかったが、リボソームへの結合には影響を与えた。 一方、トランストランスレーション活性を失わせるようなtRNAドメイン上の一塩基置換も明らかにした。 これらの変異は、トランストランスレーションのメカニズム解明につながるものと考えられ、今後の研究が期待される。
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