ゼブラフィッシュは、複雑な生命現象を制御する脊椎動物遺伝子の機能を解明するためのモデル動物として近年盛んに用いられるようになってきた。しかしながら、モデル生物としての歴史が浅いため遺伝子機能解析のための方法論の開発は発展途上段階にあるといえる。私は本研究において、得られた遺伝子の機能を個体レベルで解析するためのリバース遺伝学的方法論の開発を目的とした。得られた遺伝子を遺伝子導入することによりトランスジェニックフィッシュを作成し、目的とする遺伝子の機能を解析することは非常に有用な方法である。私は、ゼブラフィッシュにおける新しい外来遺伝子導入法を開発するための基礎研究を行った。 我が国で開発された実験動物であるメダカにおいては、トランスポゾンが同定されている。このメダカトランスポゾンがゼブラフィッシュゲノム上において転移すれば、ゼブラフィッシュにおける遺伝子導入の際のベクターとして使用する方法論の開発が可能である。私は、このことを調べるための基礎実験を行った。その結果、 (1) 既にクローニングされたメダカトランスポゾンが転移の第一段階である切り出し反応を自律的に起こしうる因子であること。 (2) メダカトランスポゾンの切り出し反応がゼブラフィッシュにおいて起こること。を発見し、これらの成果の論文発表及び分子生物学会のワークショップにおいて口頭発表を行った。また、1999年3月末にドイツで開催されるゼブラフィッシュ学会において口演発表に採択され発表予定である。メダカトランスポゾンを用いた効率のよいゼブラフィッシュの新しい外来遺伝子導入法を開発するべく研究を継続中である。
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