研究概要 |
ある種の遺伝子では、RNA Polymerase Hが転写を開始した後、その伸展反応を停止する事により、転写調節を行っている。この状態のRNA Polymerase IIをPaused polymeraseと呼ぶ。この現象はいくつかの遺伝子(c-myc,c-fos,EGF rcccptor,adenosine dearminase,HSP70,HSP26,etc.)で見つかり、一般的な現象として認識され、転写調節の重要な一過程と考えられているが、その生物学的意義は不明であった。その生物学的意義を探るため、モデルシステムをショウジョウバエの細胞培養系を用いて作成し、解析を行った。その結果、Paussed Polymcraseは遺伝子の活性化の初期速度をあげるのに寄与していることが明らかになった。しかし、転写の開始と対になる終結への関与、転写を急速に停止させるということへの関与も想定され、現在そちらの解析を行っている。また、pauseした状態から急速に転写を再開するのに必要な因子に興味を抱き、その解析を進行中である。Paussed Polymerasの成立に必要な転写調節領域のエレメントを同定するため、Paussed Polymcraseを維持する代表的な遺伝子であるショウジョウバエHSP70遺伝子に種々の変異を導入した。HSP70は、その遺伝子の転写調節領域に、GAGA因子結合領域を持つ。GAGA因子はクロマチンの解きほぐしに関与することが知られている因子であるが、Paussed Polymeraseを解析する過程で転写因子として、転写そのものに関与していることを明らかにした。従来言われていたように、クロマチン構造を崩すだけでなく、RNA Polymerasc IIそのものと何らかの関係を持ち、転写の活性化に関与しているようである。この機構明らかにするため、現在その解析を進めている。
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