研究概要 |
大腸菌転写終結因子Rhoは単一のサブユニットからなる環状6量体の構造を持ち,ATPの加水分解のエネルギーを利用しながら新生RNA鎖を鋳型DNAから解離させるヘリカーゼとしての機能を果たす.本研究では、RhOがアミノ酸配列上F@@S21@@E2-ATPaseと相同であることに着目し,両者の間の構造的・機能的関連をさらに掘り下げる実験を進めた.従来,RhoはATPを6量体当たり3分子しか結合できないことが示されており,それより,6量体中でサブユニットは不均質な機能状態をとっているものと推測されていた。このことの機構的意義を探るために、ATPase反応開始初期過程におけるATPの結合量と加水分解速度の変化を追跡したところ、最初に6量体に結合した3分子のATPはADPに変換された後、乖離することなくサブユニット上に強固に保持されたまま留まり、その一方,残る3個のサブユニットの上で速やかな加水分解が定常的に継続することが見い出された.因に,F@@S21@@E2-TPaseの場合にも,非触媒サブユニットαと触媒サブユニットβが3個ずつ交互に並んだ環状ヘテロ6量体上で,αサブユニット側にATPが触媒反応に参与しないまま強固に結合していることがよく知られている.従って,RhoとF@@S21@@E2-ATPaseとは,1次構造上のみならず,ATPaseとしての基本的反応機構においても共通性を持つことが確証された.今後さらに,このATP加水分解過程がRhoの持つもうひとつの機能的側面であるRNA相互作用とどのように共役しているかに解析を進めることにより,Rhoの分子作用機構解明への道が開けるものと期待される(米国オハイオ州立大学S.Patel博士との共同研究,J.Biol.Chem.,in press)
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