最近、真核生物染色体DNAの複製機構は酵母からヒトまでよく保存されていることがわかってきており、我々は真核生物共通の複製制御を知るために出芽酵母を用いて研究を行ってきた。DNA複製の開始から伸長には多くの因子が必要であるが、そのいくつかにターゲットを絞って解析している。 Mcm10はDNA複製に必須な因子で、高温感受性mcm10-1変異株では、他のmcm(Mini-ChromosomeMaintenance)変異株と同様にミニ染色体の維持が正常におこなわれない。Mcm10は真核生物で保存されているMcm2-7蛋白質ファミリーと物理的に相互作用している。また、以前の解析から、Mcm10は複製開始複合体の活性化および活性化されなかった複製開始複合体の解離に必要であることを示唆する結果が得られている。 Mcm10の局在を、細胞の分画やchromosome spread法を用いて詳細に調べたところ、細胞周期を通じて核内の不溶性構造に結合しており、さらにORC(Origin Recogn ition Complex)と局在が同じであることがわかった。物理的にもORCと相互作用していることを示唆する結果が得られ、Mcm10は複製開始複合体の形成場所を決めている因子のひとつと考えられる。 また、mcm10変異との合成致死変異を分離することにより遺伝学にMcm10と相互作用する因子を多数分離しており、その一つが新生鎖のプロセシングに関与していると考えられているDna2であることがわかり、Mcm10は複製開始から伸長に移行する過程にも関与する可能性が示された。 最後に、分裂酵母のCdc23が出芽酵母Mcm10の構造上および機能上のホモログであることを見い出し、これはMcm10も他の多くの複製関連因子と同様に真核生物共通の複製制御の一端を担う因子であることを示す。
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