研究概要 |
真核生物共通の染色体複製のメカニズムを解明するために出芽酵母をモデル系として、染色体DNAの複製に必要である幾つかの因子について遺伝学的、生化学的、および細胞生物学的なアプローチを行ってきた。Mcm10タンパク質は真核生物間で保存されているMcm2-7蛋白質ファミリーと物理的に相互作用しており、複製開始に必須な因子であることがわかっている。また、以前の解析から、Mcm10は複製開始複合体の活性化および活性化されなかった複製開始複合体の解離に必要であることを示唆する結果が得られている。また、Mcm10は核内に局在してORC(Origin Recognition Complex)と物理的にも機能的にも相互作用していることを見い出した。一方、複製の伸長過程に働くDNAポリメラーゼ複合体の機能の分かっていない構成タンパク質の解析を進めている。DNAポリメラーゼII(ε)の第3,第4番目のサブユニットであるDpb3やDpb4は生育に必須ではないが、その欠失株に様々な複製関連因子の変異を導入することによって、それらと機能的に相互作用している因子を調べることがでる。そのなかには伸長反応に関与している因子のみならず、チェックポイントに関与しているDpb11やRad53があった。これはDpb3やDpb4が欠失することによってなんらかの複製異常が起り、正常に増殖するためにチェックポイント機能が必要である可能性とDNAポリメラーゼ II自身がチェックポイント制御に関わっている可能性を示唆する。さらに、Dpb3やDpb4がMcm10との機能的相互作用を示唆する結果が得られ、実際に二重変異株での複製中間体を調べると複製開始および伸長が異常になっていることが分かった。また、Mcm10の欠損株ではS期の完了に異常があることが分かったので、複製の開始と伸長過程双方に働く因子であると考えられる。
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